前回、スペイン人のフラメンコのノリは、長い拍と短い拍で出来ているとお話ししました。事の真偽を検証します。
事実確認の難しさ
最近では、スペイン人に踊りやリズムを習う人も多いので、彼らに質問することもできると思います。しかし、スペイン人に対して、
「フラメンコのリズムは、長い拍と短い拍がある」
「スペイン人は通常のメトロノーム通りにフラメンコをやっていない」
これらのことを指摘したり質問したりすると、
「とんでもない!普通のメトロノーム通りにやっている!」
と反論されると思われます。
しかし、いざ彼らが集まってフラメンコをすると、ごく自然に、長い拍と短い拍の混ざったリズムを行ったりします。つまり、彼らは、それを無意識に行っているのです。
彼らが無意識な以上、彼らの言うことを信じて練習を重ねても、彼らと同じノリを表現することはできません。
全体を見ると…
スペイン人が長い拍と短い拍を無意識に操っていると言っても、「全てのスペイン人が、いついかなる時も」と言えないところが、話を複雑にしています。
通常メトロノーム通りの人もいる
日本人アルティスタでも、リズムの良い人とそうでない人がいますが、スペイン人と言えど、それは同じです。良いノリを持っている人と、ごく普通のノリを持っている人がいます。
コンディションによる
日本人でもスペイン人でも、フラメンコを誰かと一緒に行えば、共演者のリズムの影響を受けます。日本に来たばかりのスペイン人のリズムと、日本に長期滞在したスペイン人のリズムは違います。
良いリズムを出していた人が、いついかなる時も良いリズムを出してくれるなら、私たちの学ぶべき対象も明らかになるのですが…。
実際の音源から検証
リズムの良いスペイン人と言えど、必ずしも良いノリを表現できているとは限りません。特に、CDの収録においては、通常のメトロノームを使ってテンポを維持させたりするので、ノリが良くないものになってしまう場合も多いのです。
いわねがノリが良いと感じた、1枚のCDを紹介します。
Jerez sin Fronteras/Jesus Mendez
このCDの8曲目(Sueno El Barrio)に、歌とパルマとハレオだけのブレリアが収録されています。これをPCに取り込み、データ化して、メトロノームと時間軸を合わせました。
リズムの良いスペイン人のノリを、目で見ることができるので、参考になると思います。
データの分析
1枚目の画像をご覧下さい。
上段「単6拍子」は単純な6拍子(通常のメトロノーム)のリズム、中段「フラメンコ6拍子2」はMRC1の6Bを鳴らしたリズム、下段はCDより収録したブレリアのパルマを表しています。左端が⑫拍目、右端は⑥拍目です。
彼らのリズムのノリは、MRC1とほとんど同じことがわかるでしょう。
次に、2枚目の画像をご覧下さい。
スペイン人アルティスタと言えども、やはり人間です。ピッタリ合うときもあれば、ズレる時もあります。2枚目の画像は、「ズレている時の彼らの様子」です。下段のパルマが、2つに割れています。複数で叩いているパルマが、1つに合わなかった瞬間のデータです。
2つに分かれた⑫拍目のうち、早く音を出した人にMRC1の⑫拍目を合わせました。しかし、遅かった人でも①拍目ではMRC1と合っています。そして、そんなことは些細なことであるかのように、③拍目にはMRC1と合っています。
そして、どちらの人も「単6拍子」のリズムとは合っていません。
このように、仲間とリズムが合わない瞬間はあるかもしれませんが、彼らの感じている拍は、一定間隔ではないのです。
困難なデータ取得
もっと多くのデータをご紹介したかったのですが、歌やギターが入っている箇所では、もっと複雑な波形になってしまい、グラフ化してもわかりにくいのです。
データ取得という目的でなければ、良いリズムとして参考になる音源は多数あります。長い拍と短い拍の感覚に慣れて、ノリの良いリズムを楽しみましょう。
練習伴奏(初回無料)は、こちらからどうぞ
練習伴奏のお申込みやご相談は、こちらからどうぞ
コメントをお書きください